彼方の蒼

   ◇   ◇   ◇

 公立高校一般入試の前日、僕はカンちゃんの家でげん担ぎのトンカツをご馳走になった。
「緊張してるか?」
「まさか。まだ前日だろ」
「おれはしてる」
「柔道やってる猛者が?」
「柔道やってる猛者が」

「カンちゃんは受かるよ。波乱はもうない。いらない」
「波乱かー。落ちたら波乱なんだよな。フツーにやりゃ負けねーよな、ハルもおれも」

 普通にやれば負けない。
 呪文のように唱えながら、家まで自転車をこいだ。
 入浴を済ませると21時になっていた。
 携帯を開くも、なにもしないで寝た。

『私はいつも先生ですよ』

 僕がお願いしなくても、倉井先生のことだ。
 きっとみんなの合格を祈っている。
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