彼方の蒼
◇ ◇ ◇
「でもさ、この日程どうなのかな」
「受験まえに卒業式するよりなんぼかマシじゃねえか?」
堀柴さんとカンちゃんが立ち話をしているところに僕も加わることにする。
「落ちた、受かったの線引きがはっきりされるまえに同じ境遇で臨めるのはありがたいよ。自分だけ決まってないとか、嫌だよ」
それもそうだね、と堀柴さんはあっさり言った。
式がはじまる直前の教室で、僕たち三年生は似合わないピンクの造花を制服の胸につけてそわそわしている。
登校時に持ってくるものもほとんどないから鞄のなかは空っぽに近くて、忘れ物をしているんじゃないかと落ち着かない気持ちにさせられていた。
そんななか、写真を撮ろうと気の早いヤツが言い出して失笑を買っている。
卒業証書をもらってからでないと様にならないだろ、とどこからともなく声が上がった。
「制服のボタンもまだ女子に渡せねえな」
カンちゃんが真顔で僕にだけ聞こえるくらいの声で言った。
「え。カンちゃん誰かにあげるの?」
「欲しいってヤツにはやるよ。おまえは?」
「欲しいってヤツにはやるよ」
お互いに顔を見合わせて笑う。
わかんないよ?
バレンタインチョコゼロから人気急上昇してたら、わかんないよ?