彼方の蒼
心に浮上した疑問のすべてを、僕はぶつけてみた。
堀芝サンは、淡々と答えた。
「よくわからないけど『できる人』に見られがちなんだよね、わたし。そのイメージを壊さないようにしているだけなんだよ。落ちつきは……うん、ある。動揺を表に出さないようにしてる。今ここにいるのは、アルバム編集委員だから」
「アルバム編集委員? なにそれ」
「なに……って、そーやまくんもいたでしょ? あのとき」
なんのことやら。
「ハルがせっせと教科書やらノートやらにマジックで名前書いてたとき、ホームルームで決めたんだよ。おれと堀芝がいちばん受験のことでヨユーありそうだっていうんで、選ばれたんだ。なあ?」
カンちゃんの最後の『なあ?』は堀芝サンに向けられていて、堀芝サンは頷いたあと、僕を見た。
――そういやそんなことがあったかもしれない。
名字が変わって、『惣山』って書きにくいなあ、練習しなくちゃ! ついでだから、持ち物に書いてある『渡辺』姓を直そう。おおこんなところに油性マジックが! 僕って準備いいなあ~。
――と思って、いそいそと内職をしていたよ。していたさ。
堀芝サンは僕の教科書の最後のページを開き、
「なにこれ。あはは! そーやまくんって、意外に男の子っぽい字を書くんだねー」
と、遠慮のない感想を述べた。
それってへたくそってことだよな?
なにはともあれ、僕は『3年1組選抜·見かけは最高に勉強できそうなペア』に囲まれて、人が羨むくらい充実した学習時間を過ごすことに成功したようだ。
微妙な言い回しでゴメン。きっと、僕は賢くなってなんかいない。
『身の上心配あるから参上』と言われたときは、堀芝サンって僕のために現れた助っ人なのか!? と動揺したし。
『いよちゃんの胸毛·応仁の乱』と言われたときは、頭んなか、胸毛を生やした『いよちゃん』という女の子でいっぱいになって、そんなトコ見られた日には、戦のひとつも起こしたくなるよなあと、妙に『いよちゃん』に同情した。
堀芝サンは、淡々と答えた。
「よくわからないけど『できる人』に見られがちなんだよね、わたし。そのイメージを壊さないようにしているだけなんだよ。落ちつきは……うん、ある。動揺を表に出さないようにしてる。今ここにいるのは、アルバム編集委員だから」
「アルバム編集委員? なにそれ」
「なに……って、そーやまくんもいたでしょ? あのとき」
なんのことやら。
「ハルがせっせと教科書やらノートやらにマジックで名前書いてたとき、ホームルームで決めたんだよ。おれと堀芝がいちばん受験のことでヨユーありそうだっていうんで、選ばれたんだ。なあ?」
カンちゃんの最後の『なあ?』は堀芝サンに向けられていて、堀芝サンは頷いたあと、僕を見た。
――そういやそんなことがあったかもしれない。
名字が変わって、『惣山』って書きにくいなあ、練習しなくちゃ! ついでだから、持ち物に書いてある『渡辺』姓を直そう。おおこんなところに油性マジックが! 僕って準備いいなあ~。
――と思って、いそいそと内職をしていたよ。していたさ。
堀芝サンは僕の教科書の最後のページを開き、
「なにこれ。あはは! そーやまくんって、意外に男の子っぽい字を書くんだねー」
と、遠慮のない感想を述べた。
それってへたくそってことだよな?
なにはともあれ、僕は『3年1組選抜·見かけは最高に勉強できそうなペア』に囲まれて、人が羨むくらい充実した学習時間を過ごすことに成功したようだ。
微妙な言い回しでゴメン。きっと、僕は賢くなってなんかいない。
『身の上心配あるから参上』と言われたときは、堀芝サンって僕のために現れた助っ人なのか!? と動揺したし。
『いよちゃんの胸毛·応仁の乱』と言われたときは、頭んなか、胸毛を生やした『いよちゃん』という女の子でいっぱいになって、そんなトコ見られた日には、戦のひとつも起こしたくなるよなあと、妙に『いよちゃん』に同情した。