彼方の蒼
「こうやって小柳くんとそーやまくんに喋って、ふたりから『そんなことないよ』って言ってもらうことを期待してるのかもしれない。……そう考えたら、なんてずるいんだろうって思った。結局わたしだって、誰かに言いたいこといっぱいあって、でもいいカッコばかりして、いつもそうで、言えなくしたのは自分のせいで……そういう自分のこと、どんどん嫌いになっちゃって……それでも」

 これだけの気持ち抱えている堀芝サンのどこに余裕があるというの?

「つらいの自分たちだけだなんて、思ってほしくなかった。絶対絶対思ってほしくなかった」

 堀芝サンはうつむいた。
 僕らのテーブルにだけ、沈黙が落ちた。
 ふたつ向こうの席で、女の人が『やだあ!』と言っているのが聞こえた。


 しばらくたって、カンちゃんが聞いた。
「堀芝それあのふたりに言ってないだろ?」
「言ってないよ。これからも言わない。これっきりにする。そうでなきゃ、マッキイとせいちゃん差し置いて、小柳くんとそーやまくんになんか言ったりしない」

 え? え? え?
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