彼方の蒼
カンちゃんと僕の乱闘はまったくの無駄だった。
石黒が事情を全部知っているかどうかはわからないけど、どうでもいいけど、きっと僕たちのことを余裕ある場所から眺めている心境なんだろう。
慌てることなく、痛みもなく。
……どうでもいいや。
「はっきり言ってください。僕、頭悪いんで、まわりくどい言いかたされても困るんで」
「葉子に想いを寄せている君は、葉子のお腹の子供のことを知る権利がある」
権利権利権利。
ほんとに教諭なのかよ。教え諭すって、こういうことなのか?
僕は別にどうでもよかった。倉井先生の子供の父親が誰かなんて、どうでもよかった。
――僕が倉井先生と結婚すればいい。
これ以上の思いつきはないんじゃないかってくらい、名案に思えた。
別に、籍を入れるのは今すぐじゃなくたっていい。
いつか、そう遠くない未来の夢だ。
法律ぎりぎりのところまで、先生と、それから生まれてくる子供に待っていてほしい。
そうすれば、僕が父親だ。血なんか関係ない。
離れ離れでも家族だってこと、誰より僕が知っているじゃないか。
役所への届けなんて、二の次。気持ちがあれば、いつでも家族なんだ。僕の父と母がこの世であのふたりしかいないように。
「だいぶショックだったようだね。君にはすまないと思っている」
「何を?」
僕はバカな石黒を見るのが嫌で、丸椅子に向かいあった半径1メートルの距離が嫌で、声を聞くのも喋るのも嫌で。
必要最低限の会話ですむように、極力言葉を選んで、言ってやった。
「相手が誰であろうと関係ない。倉井葉子が好きだ。お腹の子供も愛してる」
石黒が事情を全部知っているかどうかはわからないけど、どうでもいいけど、きっと僕たちのことを余裕ある場所から眺めている心境なんだろう。
慌てることなく、痛みもなく。
……どうでもいいや。
「はっきり言ってください。僕、頭悪いんで、まわりくどい言いかたされても困るんで」
「葉子に想いを寄せている君は、葉子のお腹の子供のことを知る権利がある」
権利権利権利。
ほんとに教諭なのかよ。教え諭すって、こういうことなのか?
僕は別にどうでもよかった。倉井先生の子供の父親が誰かなんて、どうでもよかった。
――僕が倉井先生と結婚すればいい。
これ以上の思いつきはないんじゃないかってくらい、名案に思えた。
別に、籍を入れるのは今すぐじゃなくたっていい。
いつか、そう遠くない未来の夢だ。
法律ぎりぎりのところまで、先生と、それから生まれてくる子供に待っていてほしい。
そうすれば、僕が父親だ。血なんか関係ない。
離れ離れでも家族だってこと、誰より僕が知っているじゃないか。
役所への届けなんて、二の次。気持ちがあれば、いつでも家族なんだ。僕の父と母がこの世であのふたりしかいないように。
「だいぶショックだったようだね。君にはすまないと思っている」
「何を?」
僕はバカな石黒を見るのが嫌で、丸椅子に向かいあった半径1メートルの距離が嫌で、声を聞くのも喋るのも嫌で。
必要最低限の会話ですむように、極力言葉を選んで、言ってやった。
「相手が誰であろうと関係ない。倉井葉子が好きだ。お腹の子供も愛してる」