彼方の蒼
6.おまえのやりかたで
カンちゃんとの話は、夕方6時まで続いた。
「しかし、さっきから気になっていたんだが……倉井先生の子供って、ハルの子じゃないのなら、一体誰の子供なんだ?」
あ、言うの忘れてた。
「石黒だよ」
「石黒!? げー、あの筋肉バカかよっ」
倉井先生趣味悪すぎる、とカンちゃんの顔に書いてあった。
倉井先生の悪口は許しがたいけど、この件に関してはカンちゃんと同意見。
僕は石黒との保健室でのやりとりを、惣山春都昏倒シーンまで語った。
◇ ◇ ◇
帰リ道は雪だった。アスファルトを濡らす程度。
積もる雪じゃないからと傘を借りずにカンちゃん家を出た僕は、商店街へと向かった。
なんの用事もないけれど、入院期間も短かったけど、なんていうか――この開放感を満喫したかった。
僕がすったもんだしているうちに、世のなかは2月最大のイベント一色に染まりつつあった。
建国記念日?
違う違う!
バレンタインデー。
そういやバレンタインって、祝日じゃないね。
祝日になったら、全国の乙女は泣くのかな。
男にとっては、どっちでもいいんだ。
休みだろうが、自宅謹慎だろうが、もてるヤツはもてるから。
僕は特別に甘いものが好きってわけじゃない。
けど、安くて品ぞろえも充実しているとなんとなく食べたくなる。
ところが、売り場は決戦の日に燃えている女の子ばっかり。
男はチョコレートを持った状態では、うかつにレジには近寄れない。
買いにくいと思うと、余計に食べたくなるという悪循環。
ああそうか、さっきチョコレートケーキを買えばよかったんだな。
ふいに、視界の左側に白っぽい人が見えて、今のなんだろうと思ったら、ショーウインドーに映る包帯男だった。
つまりは僕なんだけど、これって変装みたいなものだよな。
だったら、僕だってばれない?
僕はひいきにしているメーカーの板チョコをひとつ取って、レジのほうを向いた。
すぐそこに、同じクラスの内山がいた。
「しかし、さっきから気になっていたんだが……倉井先生の子供って、ハルの子じゃないのなら、一体誰の子供なんだ?」
あ、言うの忘れてた。
「石黒だよ」
「石黒!? げー、あの筋肉バカかよっ」
倉井先生趣味悪すぎる、とカンちゃんの顔に書いてあった。
倉井先生の悪口は許しがたいけど、この件に関してはカンちゃんと同意見。
僕は石黒との保健室でのやりとりを、惣山春都昏倒シーンまで語った。
◇ ◇ ◇
帰リ道は雪だった。アスファルトを濡らす程度。
積もる雪じゃないからと傘を借りずにカンちゃん家を出た僕は、商店街へと向かった。
なんの用事もないけれど、入院期間も短かったけど、なんていうか――この開放感を満喫したかった。
僕がすったもんだしているうちに、世のなかは2月最大のイベント一色に染まりつつあった。
建国記念日?
違う違う!
バレンタインデー。
そういやバレンタインって、祝日じゃないね。
祝日になったら、全国の乙女は泣くのかな。
男にとっては、どっちでもいいんだ。
休みだろうが、自宅謹慎だろうが、もてるヤツはもてるから。
僕は特別に甘いものが好きってわけじゃない。
けど、安くて品ぞろえも充実しているとなんとなく食べたくなる。
ところが、売り場は決戦の日に燃えている女の子ばっかり。
男はチョコレートを持った状態では、うかつにレジには近寄れない。
買いにくいと思うと、余計に食べたくなるという悪循環。
ああそうか、さっきチョコレートケーキを買えばよかったんだな。
ふいに、視界の左側に白っぽい人が見えて、今のなんだろうと思ったら、ショーウインドーに映る包帯男だった。
つまりは僕なんだけど、これって変装みたいなものだよな。
だったら、僕だってばれない?
僕はひいきにしているメーカーの板チョコをひとつ取って、レジのほうを向いた。
すぐそこに、同じクラスの内山がいた。