すきなひと
「はぁぁ」


化粧室の鏡の前でようやく息がつけた。

似合わないドレス。

少し大きいサイズの合わない結婚指輪。

何もかもがお姉ちゃんを思わせる。


「どんな気分?陽子の彼横取りした気分は?」


後ろから聞こえた声に振り返った。

「麻紀さん」

麻紀さんはお姉ちゃんの親友だった人。

「陽子も浮かばれないよね。凌はね、まだ陽子だけなの。貴女は愛されないの」


そう言って麻紀さんは出て行った。


「そんな事誰よりも分かってる」


分かってるよ。お姉ちゃんには永遠に敵わない。

それでも、それでも 好きなの。ずっとずっと凌さんが好きだった。




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