すきなひと

「病室で休むように言ったんだけど、バタバタして落ち着かないからって。

ねぇ。しっかりしないと。貴女は彼の妻なんでしょ??」

「.......」

「別に意地悪で言ってるんじゃないの。ただ自覚しなさい。貴女は彼の妻なの」


「.....はい」

「目を覚ましたら、何か消化の良いもの食べさせて。何かあれば連絡して。」

そう言ってプライベートの携帯番号とアドレスが書いてある名刺を渡された。

「ありがとうございます」

玄関まで見送ると、ドアノブに手をかけたまま麻紀さんは

「陽子が生きていれば。って、今でも思うの」


そう言って帰って行った。



< 28 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop