すきなひと
「病室で休むように言ったんだけど、バタバタして落ち着かないからって。
ねぇ。しっかりしないと。貴女は彼の妻なんでしょ??」
「.......」
「別に意地悪で言ってるんじゃないの。ただ自覚しなさい。貴女は彼の妻なの」
「.....はい」
「目を覚ましたら、何か消化の良いもの食べさせて。何かあれば連絡して。」
そう言ってプライベートの携帯番号とアドレスが書いてある名刺を渡された。
「ありがとうございます」
玄関まで見送ると、ドアノブに手をかけたまま麻紀さんは
「陽子が生きていれば。って、今でも思うの」
そう言って帰って行った。