第00夜

‐Ⅲ‐

美由は今まで、何度、悪夢の中で恐ろしい思いを…。
そう思うと、明葉の心は痛んだ。
私が、死の夢…美由の夢の世界に迷い込むのは、どうして?
夢魔と名乗り消えた少年。
本当に夢の悪魔…インキュバス?
死の夢の都市伝説だけでも現実離れしてるのに…。
不可解な事ばかり明葉の頭の中を占めてゆく。
が、今廊下を歩く感覚のリアルさが、逆に現実を認めさせる。
明葉が廊下の岐路まで来ると、不意に近くで獣の唸り声がした。
「………!」
曲がりから影の化物が顔を出す。
その姿は、昨日と違っていた。
大型の獣のよう、より荒々しい姿。
「悪夢が成長してる…!?」
明葉は、思わず怯んだ。
が、丁度、廊下に設置されてある『武器』が目に入った。

逃れたければ、悪夢と闘う事…。

明葉は消火器を構えると、化物に向け勢いよく中身を噴射させた。
辺りが白い消火剤に覆われる中、化物の呻く声が上がる。
明葉はがむしゃらに駆け出した。

最悪アレを倒せなくても…美由と一緒に朝まで逃げ回ってやる。
悪夢が覚めるまで、闘ってやる。

明葉の意志は正しかった。
意志が死んでしまっては、夢でも現実でも闘えないのだから‐。
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