私のちょっとだけ好きな9文字の人
「実はな、あの話、嘘なんじゃ」
「はあ?」
「いや、その、あそこの池やなくて、広島にある池での、昔、2か月の海外出張から帰ってから、母さんにプロポーズしたんよ」
「あらやだ。それを京介に話したんですか?」
「いやあ、あの時は結構酔っとったからのお。あはははは」
じゃあ、何かね?
俺は、ゆかりも何にもないただの池に同級生を連れて行って、
父さんと母さんの馴れ初めを真顔で語ってきたわけですかい。
「おじさん、かっこいい!やりますねー!」
有希お姉ちゃんがヒューヒューと冷やかす。
冗談じゃない、この父親は。