私のちょっとだけ好きな9文字の人




「あの日、ちょうど高知のあのグラウンドの近くで映画のロケがあったんだー。
でね、トイレを借りに来たんだけど、そこで京介くんたち4人がいたの」




住岡と高柳を仲直りさせてた時か。




「そこで14番をつけた男の子、京介くんが一生懸命誰かを仲直りさせてて、優しい人だなって思って見てたの」




優しいのか?それは。




「で、仲直りができた時、みんなでこう、"オーッ!!"ってやってた時の京介くんの顔が眩しくて、なんか、いいなって思っちゃったんだー」




「え?どういうこと?」




「香恋、小さい頃から役者やってたから、学校とかあんまり行けなくて、友達もいなかったんだー。本当はみんなみたいにお話したかったし、恋だってしてみたかったし。だから、京介くんが羨ましくて、憧れてたんだと思うんだよねー」




子役ってそんな苦悩があったんだな。
なんかちょっとだけかわいそうな子に見えてきた。




「でね、撮影中も京介くんの笑顔が忘れられなくて、撮影が終わってから、
グラウンドに行ってみたの。そしたら、14番をつけた京介くんがそこにいて、すっごく楽しそうに、サッカーしてて。あの時のゴールはほんと、かっこよかったな」




俺の初ゴールの瞬間、見ていたのか。




「で、いつの間にか応援してて、結局、負けちゃって。その時、一生懸命やって思いっきり泣いてた京介くんの顔を見てたら、こっちまで泣きそうになって。これが演技じゃない、本当の涙なんだって、感動なんだって思ったの」




泣き顔見られてたのか・・・
恥ずかしくなってきた。




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