私のちょっとだけ好きな9文字の人
「それから、試合の後、マネージャーさんにお願いして、サッカー大会の関係者にスカウトマンのフリをしてもらって、14番の子の名前を聞いてもらったの。そしたら、愛媛県の宇和島市ってところにある香林小学校の3年生、藤原京介くんだって」
なるほど、それで俺の名前と学校がわかったのか。
「気づけば、これが恋なんだなって。理屈じゃないんだよね、恋って。だから香恋、京介くんと一緒にいたいなって。一緒に勉強とか、遊んだりしたいなって思って、それで、はるばる東京から来ちゃったのでしたー」
香恋が舌を出して微笑む。
そうか。
こんな経緯があったんだ。
俺は、半分、からかわれているのかと思ったけど、
今の香恋の話を聞いて、納得した。
「だからね、迷惑だったらごめんね?でも、香恋、京介くんに好きな人がいても、諦めきれないんだよー。それが本気の恋ってやつなのです」
同じだ。
西田の時と同じ。
俺には相生という好きな人がいて、でも、
目の前にはこんなに俺のことを好きになってくれる人がいて、
その人はとてもいい人で、
でも、その気持ちに応えられなくて・・・
でも・・・
「一緒に勉強とか、遊んだりとかなら、俺で良かったら、いつでも一緒にしようぜ!やけん、まずは、友達からな!」
香恋は一瞬、驚いた表情を見せた後、
満面の笑顔で「うん!」と言った。
その時の香恋の笑顔を見て、
俺は少し、ドキッ!とした。
もし、相生よりも前に出会っていたら、
俺はこの子を好きになっていたかもしれない。
いや、むしろ、これから俺は
この子を好きになるのかもしれない。
「じゃ、これからも、京介くんの席に座って、朝、待っててもいい?」
前言撤回・・・かな?