私のちょっとだけ好きな9文字の人
「先生!それなら私のお母さんが藤原くんのお家まで車で送ってくれると思うので、大丈夫です。それに、今日、私と同じ班の子が学校をお休みしてるんで、藤原くんがいると私一人じゃなくなります」
西田だった。
何という助け舟。
けど、俺って西田と話したことないんだけどな。
「そうやねー、なら、あずさちゃんのお母さんがいいって言ってくれたらね?」
なぜ、西田はここまでしてくれるんだろうか。
とりあえず、俺は、西田と一緒に学校にある公衆電話で西田のお母さんに電話した。
「もしもし、お母さん。あのね・・・え?違うよー忘れ物やなくてね・・・」
通話が終わり、テレフォンカードが出てくる。
これがテレフォンカードか。初めて見た。
「お母さん、いいって。でも、5時までお仕事やけん、それからでもいいか?って」
「全然大丈夫。なんかありがとうね」
「ううん。気にせんで。藤原くんおったら帰り道一人やなくなるし、それに・・・」
「それに?」
「藤原くんとお話してみたかったし」
「え?」
「ううん。なんでもない。あ、それとテレフォンカード。持っとった方がええよ?忘れ物したとき、届けてくれるし」
そう言って西田は廊下を歩いていく。
俺はそれをただ呆然と見ていた。