私のちょっとだけ好きな9文字の人




相生はともかく、俺はこの二枚のプロ帳のことで頭がいっぱいだった。




国語の授業中、俺は先生にばれないようにプロ帳を書いていた。




(好きなスポーツは?)




これはサッカーっと。




(好きな本は?)




「怪盗ドロリシリーズ」っと。




(チャームポイントは?)




チャームポイント?
チャームポイントってなんだ?




「じゃ、藤原くん。次のところから読んで」




「は、はい!」




当てられてしまった。
しかも何ページからかわからない。




俺が教科書をめくったり、戻したりしていると、隣の席の女子が
小声で「14ページ」と言ってくれた。




「く、くまさんのお家にしょうたいされたぼくは、はちみつをたくさんごちそうになりました。おなかのいっぱいになったぼくは・・・」




クラスで爆笑が起こった。
なぜだ!?




「藤原くん!ちゃんと聞いてなかったんですか?今は、56ページですよ?」




俺はすぐさま隣の女子を見た。
女子は「本当に読んだよ、こいつ」みたいな顔で笑っていた。




「す、すみません!」




「もういいです。じゃあ、隣の高柳(たかやなぎ)さん、読んで」




「はーい。えっと、私がけいけんした出来事の中で一番心に残ったのは・・・」




俺はまんまと騙された。
くそ。




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