私のちょっとだけ好きな9文字の人
走る




掃除の音楽が流れても俺と西田は立ち尽くしたままだった。




確かに聞こえてはいるが、俺はこの場から動けないでいた。




俺は、あの西田に告白された。
誰かに告白されたことは、俺にとって初めての事だった。




告白されたら返事をしなきゃいけないっていうのは
わかっている。
だけど、なんて返事をすればいいんだろう。




「ありがとう」
なのか。
いや、「ありがとう」だと、
「俺も西田のことが好きです」ってことになる。
それは違う。




俺の好きな人は相生真希だ。
いや、でも西田も結構可愛いし、
今、感じているこの胸のツーンとくる痛みは
相生のことを好きだと気付いた時とどこか似ている。




あれ?
俺は西田のことが好きなのか?
たった今、好きになってしまったのか?




いや、でも似ているのは似ているが
どこか違う胸の痛み。
この気持ちは一体・・・




そうこうしているうちに、裏庭を掃除する生徒がこっちに歩いてくるのが見えた。




次の瞬間、俺は、とっさに西田の手を掴んで、走り出していた。









< 88 / 392 >

この作品をシェア

pagetop