私のちょっとだけ好きな9文字の人
なぜそうしたのかわからなかった。
どこに向かっているのかもわからなかった。
裏庭を抜けて、運動場に出て、ジャングルジムとブランコの間を抜け、
隣にある保育園も抜け、校門を出て・・・
俺は西田の手を引いたまま、ひたすらに走った。
学校のすぐ目の前の橋を渡り、いい匂いのするお弁当屋さんの角を曲がり、
学校と平行に流れている川沿いを走り続けた。
川の生臭い匂いと、俺の汗の匂いと、西田のシャンプーの匂いが混ざっていた。
気が付くと、俺たちは中学校の前の交差点まで来ていた。
もう、小学校の校舎は見えなかった。
息が苦しい。
西田も同じだった。
俺たちは息を整えながら、
中学校のテニスコートに入った。
なぜそうしたのかはわからない。
そこで、俺はまだ西田の手を握っていることに気づいた。
「あ、ごめん」
西田もそれに気づいたらしく、
どちらからともなく手を離した。