私のちょっとだけ好きな9文字の人




「京介くん、わかりやすいもん」




「わかりやすい?」




「うん、単純」




嬉しくない。




「だからね、私、京介くんの恋を応援しようかなって思うんよ。だって、京介くんの幸せは私の幸せだもん」




なんでそんなことが言えるんだろう。
俺なら、相生に俺じゃない好きな人がいたら、
きっと邪魔してやろうと思うのに。




西田って本当にいいやつなんだな。
そして、そんな西田にこんなに愛されてる俺。
そして、その気持ちに応えられない俺。




俺が西田のことを好きになればすべて解決するのに。
それなのに・・・




「だから、これからも仲良くしようね、京介くん」




西田は微笑んだ。
その笑顔は、今まで見てきた西田の笑顔の中で
紛れもなく一番の笑顔だった。




なのに、なんでだろう。
こうも苦しいのは。




「あ、やばっ!掃除の時間終わっとるよ、走ろ?」




俺たちは、走り出した。




来た時とは違って
これから向かうところも、向かう理由もある。




手も繋いでいない。




西田の告白に対する答えはできなかった。




西田の告白への応えもできなかった。












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