印毎来譜 「俺等はヒッピーだった」
1973年12月1日(土)晴
イラン側国境手前メシャッドで二日目。
もう12月だ、こんなとこ早く通過してインド行きてえ。
日本人は車組4人と俺等2人、あとはアメ公カナ公5人。
全員目指すはインド。
目的は草でもなけりゃ修行でもない。
ましてや観光じゃねえし、放浪ともちょと違う。
見聞だ。インド見聞。とんでもねえ国だって皆言う。
こりゃウズウズする、ワクワクする。だから行く。
物を比べられる人になれが、親父の口癖。
寒い朝、朝飯食って空き地の陽だまりで車座になる。
アフガン横断の情報交換。
北周りは距離は短いけどヤバ過ぎてダメ。
ゲリラに殺られるって。じゃ南回りしかねえ。
とりあえずアフガンのビザ申請。車組のワーゲンに乗って
大使館に乗りつける。
鉄格子の門の上にバラ線。まるで監獄だ。
ビザ申請は裏口から。 門番ひとりガン飛ばしてる。
入口にVISAって書いた紙が貼ってある。
デンマーク人の団体、アメ公のツアー客30人以上、
外まで列作ってるってえのに、くわえ煙草ニタニタ雑談。
チャイ飲んで、なめきってる事務官野郎。
ばかやろ、文句あるならビザやらねえよって顔してやがる。
誰も文句も言わず並んでる・・これにゃ理由がある。
まずテヘランでアフガン行の証明書を取る。
でもビザは取れねえ。行ってもいいよっていう書類だけ。
そんで、国境のこの町でやっとビザを発行する。
もうここでしかビザもらうとこねえわけだ。170リアル。
二段構えの荒稼ぎ。うまく出来てる、まったく。
そんなこたあおかまいなしの税関野郎がすげえ。
そん時の気分で吹っ掛ける。みんな言い値で払う。
それで奴らは儲けるって仕組み。ばっきやろーだ。
案の定170のはずが340。アメ公は400だって。
顔見て決めるビザ代。
しかも、これから昼飯とお祈りだ。
2時間後に取りに来いって、あきれてものも言えねえ。
ホテル戻って飯食って12時にまた行ってまた待って、
やーっとビザもらった。1$取られて完了、やーれやれ。
もう2時半だ。ヘラート行きバスは終わっちまったぞ。
きょう中にアフガン行く予定はオジャン。くっそ
車4人組はバス関係ねえから夕方出発した。
岡本君と二人、しょぼくれながらバス停へ行く。
国境のイスラムクアイまで100リアル? 帰ろ。
情報の80より上がってる。もう怒る気もしねえ。
ビザ取りで日陰に並んでたんで風邪気味。
列車とバスでまともに寝てねえし。
腹減ったが、もう寝ちまおう。ちっきしょうzzz
12月2日 きょうこそアフガン行くぞ。
6時起き、パンと水買ってバスに乗り込む。
さあ、噂の山賊出没のカイバル峠越えだ。
2台同時出発か、1台落っこちても・・頼むぜ。
ここで死ぬわけにゃいかねえ、目標はインドだ。
アメ公、カナ公、俺等と7人。バスの中はパンパンに満員。
屋根には荷物とあんちゃん4人。命知らずめ。
適当に停まってまだ乗せる。その度、荷物タイヤチェック。
30分停車。これじゃ いつ着くかわかりゃしねえ。
鶏かついだおやじ、香辛料かついだターバンのじいさん、
裸足の子連れてる黒ベールのおばさん。
この荒野のどこへなにしに行くんだ。笑いもしねえ、気味悪い。
エスパニオールだったら、今頃大合唱ヴィノ大会だぞ。
景色は荒野荒野、また荒野。 たまに土の家が1.2軒。
こんな所に人が住むって、なんなんだ。
それが宗教なら神様は結構残酷だ。
岩と土埃とお祈り、昼12時イラン側国境イスラムクアイ着。
バラック2軒。これが検問所か。
パスポートチェックでどうせ待たされる。
天気はいいし、パン食って寝転がる。皆どうしてっかな。
俺りゃ今アフガン国境。まだ生きてんぞ。っひっひ
アメ公「フリズビーやろうぜ」
よっしゃ、ロンドン仕込の俺の腕前見せてやる。
しかし、こういう所でフリズビーってそういう思考回路。
緊張感無しというか、怖いもん無しというか・・・
荒野に赤い円盤が舞う。 アラブの空にゃ似合わねえ。
岩をカーブして回り込む、道にワンバウンドさせる、
バスを越えてすっと落ちる、これ全部俺の技。
アメ公びっくり。っひっひっひ ロンドンで遊んだんだよ。
1時間経ってやっと俺等の番。全員まとめて並べって。
適当にパスポート見て適当にハンコ。20分で終了。
昼飯のあとのチェックはゆるい。兵隊さんも人の子だ。
さあ、次は中立地帯8kmをどう渡るか。
運ちゃんと検問官と兵隊でもめてる。
どっちの国のバス使うか・・・お前等アホか。
金払った客が待ってんだぞ・・ばかめ。
・・・ラチ開かねえ。もう、歩って行こうぜ。
みんなで歩き始めたら、後ろからミニバスが来た。
乗れよって。お、助かった。10分で着きやがった。
そんで、1ドルか100リアルか70アフガニ払えって。
なにい!ヴァッキヤローてめえ。
てめが勝手に乗せといてバッキヤ・・・怒るの疲れた。
もう、ここんちの常識に合わせなきゃ気が狂っちまう。
俺等の常識は通じねえんだ。カンネンしてさっぱりしよ。
そんなこんなで、アフガン側の国境に辿り着いた。
ここがまた、輪かけて最悪の最悪。コンクリ建物の検問所。
周りのテントの中で銃持ってる兵隊が10人位。
ニヤニヤしてごろごろしてやがる。ヒマこいてんじゃねえぞ。
税関対応するのは2人だけ。そいつ等ものろのろしやがって、
たばこ吸ってバカ笑いして、チャイ飲んで。
そんで、タカリだ。
ドル札、ラジオ、時計せがんで2時間半。やっと俺等の番。
あったり前の面して、俺のジーパンからベルトを抜きやがる。
そんでパスポートチェックして次はカスタムチェック。
机にお前等の荷物全部出して並べろ!
持ち物検査じゃない。税関員のかつあげタイムだ。
用紙3枚記入して待つ。・・・30分。
ラジオ取られたカナ公が叫んだ。顔真っ赤。
「フッーーー ファックユー!」
よーっし!よく言った。でもそれ以上暴れたら命はねえぞ。
アラブの常識にゃ逆らえねえ。観念しようぜカナ公。
次は、レートめちゃくちゃの3$強制両替。
まだ次がある。イエローカードチェックだ。
これが、最終かつあげポイント。
若い兵隊がボールペン抜きやがった。くれてやるよ。
アメ公は煙草抜かれた。もう笑うしかねえ。
今度はどっから湧いてきたか、裸足のガキ集団が手を出す。
うっせえー!てめえ等にやるもんなんかありゃしねえ。
こっちはいま税関野郎にたかられたとこだ。
お前等みんな泥棒かあ!くそったれ・・・ふーっ疲れた。
4時過ぎ、やっとヘラートへ向かう。
柵も灯もない山道を土煙りあげてバスは走る。
5時過ぎたら真っ暗。先の見えねえ道は恐怖。
あっ!崖下に1台、向こうにも1台バスが・・・頼むよ拝むよ。
ナンマイダー、ナンミューホーレン・・
止まった、・・・なんだ?
パスポートチェック? もう国境は渡ったぞ。
それよりお前等どっから出てきたんだ。忍者じゃあるまいし。
なりは一応兵士、4人。頭にターバン腰に銃。
覆面姿の野郎がバスに乗り込んできた。
どう見てもまともじゃねえ・・・顔真っ黒で目だけ光る。
一言も喋らねえ・・・こりゃ、やばいぞ。
覆面が全員のパスポート見て回る。
ついでにオレンジ勝手に食って、ポケットにも入れる。
アメ公の腕時計触った・・・アメ公と眼が合う・・・
ひえー! やめてくれ。
アメ公静かに「OH NO」
沈黙・・・・ガンとばしあう・・・こらえろアメ公。
っ・・・くっ・・・・・終わった。
奴等、バス降りた。
ふうーー ・・・運転手も汗拭いてる。
ほらあ!発車だ! 行けえ ドンドン行けえ!
行け、ヴァッキヤロー 金玉せり上がったぞ。
ゲリラだ、あれが噂の山賊、ゲリラだ。
ここじゃゲリラが検問する。抵抗したら殺られてた・・・。
イラン側国境手前メシャッドで二日目。
もう12月だ、こんなとこ早く通過してインド行きてえ。
日本人は車組4人と俺等2人、あとはアメ公カナ公5人。
全員目指すはインド。
目的は草でもなけりゃ修行でもない。
ましてや観光じゃねえし、放浪ともちょと違う。
見聞だ。インド見聞。とんでもねえ国だって皆言う。
こりゃウズウズする、ワクワクする。だから行く。
物を比べられる人になれが、親父の口癖。
寒い朝、朝飯食って空き地の陽だまりで車座になる。
アフガン横断の情報交換。
北周りは距離は短いけどヤバ過ぎてダメ。
ゲリラに殺られるって。じゃ南回りしかねえ。
とりあえずアフガンのビザ申請。車組のワーゲンに乗って
大使館に乗りつける。
鉄格子の門の上にバラ線。まるで監獄だ。
ビザ申請は裏口から。 門番ひとりガン飛ばしてる。
入口にVISAって書いた紙が貼ってある。
デンマーク人の団体、アメ公のツアー客30人以上、
外まで列作ってるってえのに、くわえ煙草ニタニタ雑談。
チャイ飲んで、なめきってる事務官野郎。
ばかやろ、文句あるならビザやらねえよって顔してやがる。
誰も文句も言わず並んでる・・これにゃ理由がある。
まずテヘランでアフガン行の証明書を取る。
でもビザは取れねえ。行ってもいいよっていう書類だけ。
そんで、国境のこの町でやっとビザを発行する。
もうここでしかビザもらうとこねえわけだ。170リアル。
二段構えの荒稼ぎ。うまく出来てる、まったく。
そんなこたあおかまいなしの税関野郎がすげえ。
そん時の気分で吹っ掛ける。みんな言い値で払う。
それで奴らは儲けるって仕組み。ばっきやろーだ。
案の定170のはずが340。アメ公は400だって。
顔見て決めるビザ代。
しかも、これから昼飯とお祈りだ。
2時間後に取りに来いって、あきれてものも言えねえ。
ホテル戻って飯食って12時にまた行ってまた待って、
やーっとビザもらった。1$取られて完了、やーれやれ。
もう2時半だ。ヘラート行きバスは終わっちまったぞ。
きょう中にアフガン行く予定はオジャン。くっそ
車4人組はバス関係ねえから夕方出発した。
岡本君と二人、しょぼくれながらバス停へ行く。
国境のイスラムクアイまで100リアル? 帰ろ。
情報の80より上がってる。もう怒る気もしねえ。
ビザ取りで日陰に並んでたんで風邪気味。
列車とバスでまともに寝てねえし。
腹減ったが、もう寝ちまおう。ちっきしょうzzz
12月2日 きょうこそアフガン行くぞ。
6時起き、パンと水買ってバスに乗り込む。
さあ、噂の山賊出没のカイバル峠越えだ。
2台同時出発か、1台落っこちても・・頼むぜ。
ここで死ぬわけにゃいかねえ、目標はインドだ。
アメ公、カナ公、俺等と7人。バスの中はパンパンに満員。
屋根には荷物とあんちゃん4人。命知らずめ。
適当に停まってまだ乗せる。その度、荷物タイヤチェック。
30分停車。これじゃ いつ着くかわかりゃしねえ。
鶏かついだおやじ、香辛料かついだターバンのじいさん、
裸足の子連れてる黒ベールのおばさん。
この荒野のどこへなにしに行くんだ。笑いもしねえ、気味悪い。
エスパニオールだったら、今頃大合唱ヴィノ大会だぞ。
景色は荒野荒野、また荒野。 たまに土の家が1.2軒。
こんな所に人が住むって、なんなんだ。
それが宗教なら神様は結構残酷だ。
岩と土埃とお祈り、昼12時イラン側国境イスラムクアイ着。
バラック2軒。これが検問所か。
パスポートチェックでどうせ待たされる。
天気はいいし、パン食って寝転がる。皆どうしてっかな。
俺りゃ今アフガン国境。まだ生きてんぞ。っひっひ
アメ公「フリズビーやろうぜ」
よっしゃ、ロンドン仕込の俺の腕前見せてやる。
しかし、こういう所でフリズビーってそういう思考回路。
緊張感無しというか、怖いもん無しというか・・・
荒野に赤い円盤が舞う。 アラブの空にゃ似合わねえ。
岩をカーブして回り込む、道にワンバウンドさせる、
バスを越えてすっと落ちる、これ全部俺の技。
アメ公びっくり。っひっひっひ ロンドンで遊んだんだよ。
1時間経ってやっと俺等の番。全員まとめて並べって。
適当にパスポート見て適当にハンコ。20分で終了。
昼飯のあとのチェックはゆるい。兵隊さんも人の子だ。
さあ、次は中立地帯8kmをどう渡るか。
運ちゃんと検問官と兵隊でもめてる。
どっちの国のバス使うか・・・お前等アホか。
金払った客が待ってんだぞ・・ばかめ。
・・・ラチ開かねえ。もう、歩って行こうぜ。
みんなで歩き始めたら、後ろからミニバスが来た。
乗れよって。お、助かった。10分で着きやがった。
そんで、1ドルか100リアルか70アフガニ払えって。
なにい!ヴァッキヤローてめえ。
てめが勝手に乗せといてバッキヤ・・・怒るの疲れた。
もう、ここんちの常識に合わせなきゃ気が狂っちまう。
俺等の常識は通じねえんだ。カンネンしてさっぱりしよ。
そんなこんなで、アフガン側の国境に辿り着いた。
ここがまた、輪かけて最悪の最悪。コンクリ建物の検問所。
周りのテントの中で銃持ってる兵隊が10人位。
ニヤニヤしてごろごろしてやがる。ヒマこいてんじゃねえぞ。
税関対応するのは2人だけ。そいつ等ものろのろしやがって、
たばこ吸ってバカ笑いして、チャイ飲んで。
そんで、タカリだ。
ドル札、ラジオ、時計せがんで2時間半。やっと俺等の番。
あったり前の面して、俺のジーパンからベルトを抜きやがる。
そんでパスポートチェックして次はカスタムチェック。
机にお前等の荷物全部出して並べろ!
持ち物検査じゃない。税関員のかつあげタイムだ。
用紙3枚記入して待つ。・・・30分。
ラジオ取られたカナ公が叫んだ。顔真っ赤。
「フッーーー ファックユー!」
よーっし!よく言った。でもそれ以上暴れたら命はねえぞ。
アラブの常識にゃ逆らえねえ。観念しようぜカナ公。
次は、レートめちゃくちゃの3$強制両替。
まだ次がある。イエローカードチェックだ。
これが、最終かつあげポイント。
若い兵隊がボールペン抜きやがった。くれてやるよ。
アメ公は煙草抜かれた。もう笑うしかねえ。
今度はどっから湧いてきたか、裸足のガキ集団が手を出す。
うっせえー!てめえ等にやるもんなんかありゃしねえ。
こっちはいま税関野郎にたかられたとこだ。
お前等みんな泥棒かあ!くそったれ・・・ふーっ疲れた。
4時過ぎ、やっとヘラートへ向かう。
柵も灯もない山道を土煙りあげてバスは走る。
5時過ぎたら真っ暗。先の見えねえ道は恐怖。
あっ!崖下に1台、向こうにも1台バスが・・・頼むよ拝むよ。
ナンマイダー、ナンミューホーレン・・
止まった、・・・なんだ?
パスポートチェック? もう国境は渡ったぞ。
それよりお前等どっから出てきたんだ。忍者じゃあるまいし。
なりは一応兵士、4人。頭にターバン腰に銃。
覆面姿の野郎がバスに乗り込んできた。
どう見てもまともじゃねえ・・・顔真っ黒で目だけ光る。
一言も喋らねえ・・・こりゃ、やばいぞ。
覆面が全員のパスポート見て回る。
ついでにオレンジ勝手に食って、ポケットにも入れる。
アメ公の腕時計触った・・・アメ公と眼が合う・・・
ひえー! やめてくれ。
アメ公静かに「OH NO」
沈黙・・・・ガンとばしあう・・・こらえろアメ公。
っ・・・くっ・・・・・終わった。
奴等、バス降りた。
ふうーー ・・・運転手も汗拭いてる。
ほらあ!発車だ! 行けえ ドンドン行けえ!
行け、ヴァッキヤロー 金玉せり上がったぞ。
ゲリラだ、あれが噂の山賊、ゲリラだ。
ここじゃゲリラが検問する。抵抗したら殺られてた・・・。