兄貴がミカエルになるとき
「じゃあさ、ほかのモデルと仕事すればいいじゃない。ぼーっとしてなくて、明るくてクリアに青くて大西洋で、モデルの才能があるモデルと」

「褒めているのにすねるな。大体、マネージャーなんてやりたくてやってるわけじゃないのに、なんでほかのモデルのマネージャーしなきゃなんないんだよ」

「何でトオ兄が怒るの? 逆切れしないでよ」

「褒めているのにお前が突っかかってくるからだ」

まったく、と言いながらトオ兄は私のそばから離れ、店のカウンターに近づいていった。

そしてお店のスタッフに声をかけ、一変して和やかな笑みを浮かべて話し始めた。

ビジネススマイルも絶品だ。

店内を歩きながらトオ兄の様子をうかがってたら、目が合ってしまった。

「咲季」と声をかけられ手招きされたので、2人に向かって歩いて行った。

「お前が次の広告のモデルだって話していたんだよ。彼はダーリン。この店のマネージャー」と、そこまでは日本語で私に話しかけ、その後「彼女が今話した咲季だ」と、英語に変えて正面に立つダーリンに紹介した。

私が言葉を発する前にダーリンは、ブランドにぴったりの爽やかな笑顔で右手を差し出してきた。

「君が新しいブランドイメージなんて楽しみだね」
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