兄貴がミカエルになるとき
翌日のダーリンの個人レッスンは予想通りの展開だった。

大きなボードを持つにも苦労しパドリングもままならず、ボードに立つどころではなかった。

ダーリンが自分の足に私のボードをつないで沖まで連れて行ってくれるが、波が来るたびにうまくかわせずブクブクともがいてしまう。

「咲季、波が来たら頭を沈めろ。ダーリンの足がちぎれるぞ」

隣に並んでパドリングしているトオ兄が叫ぶ。

ダーリンと一緒につながって海の上にいるのは幸せだったが、サーファーへの道のりは遠かった。

必死にボードの上に立とうとしても、その瞬間にボードから転げ落ち、また這い上がってはすぐ落ちる、ということを繰り返す。

「もう限界。上がらせて」

ついに私は弱音を吐いて、またもやダーリンに引っ張られて浜に戻った。

砂浜にぺたりと座り込んだ私に、ダーリンが「are you OK?」と心配そうに聞いてくる。

「I am fine. Thank you. , but I cannot do that well,sorry」とカタコトの英語で返すと「no! Good jobだよ、咲季!」と、肩を叩かれた。

ドキドキする。たまらなくドキドキする。

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