兄貴がミカエルになるとき
自分の体型が受けいれられるどころか利点となるモデルをやってみたいという気持ちはあったけど、中学3年生にとっての最大の目標は、まず志望高校合格なのである。

「咲季の気持ちしだいね。やりたいならやる気を出せばいいし、そんなに興味がないならやらなきゃいいし。でも人生2度とない、最初で最後のチャンスだと思うけど」

右手でつまんだティーカップを軽く持ち上げて、ママが中学生の娘に向けるには迫力のありすぎる流し目を送ってくる。

私に選択のすべてをゆだねてくれるのは有難いけど、結論丸投げ、何のアドバイスにもなっていない。

「身長が活かせるし、かっこいいじゃないか。みんなをギャフンと言わせてやれるぞ」

膝に乗せたモンモンを優しくなでながら、トオ兄が軽く言う。

それにギャフンて何よ。

まったく親身になってくれていないその様子を見て、「トオ兄はいつも人ごとみたいに言うね」と文句を言うと、「だって人ごとだもん」と返された。

確かにその通りだけど。

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