兄貴がミカエルになるとき
「学業はおろそかにしないこと、やるなら高校も必ず合格しなさい」

だからパパは普通すぎるってば。

そして、私を茶色い瞳でしっとりと見つめるモンモン。

ああ、きっと君のアドバイスが一番説得力があると思うのだけど、残念ながらテレパシーではよくわからない。

「うーん」

ソファの上であぐらをかき、腕組をして目を瞑り、しばし本気で悩む。

「咲季、やってごらんよ。俺が側でお前をフォローしてやるよ。勉強だってみてやるからさ」

めずらしい。あまり聞いたことのない甘く親身な言葉がトオ兄から舞い降りてきた。

何かある。

甘いことばの裏にはきっと何かある。

脳の右端あたりでチカチカ点滅する危険信号を捉えながらも、大抵の女子が騙される、うっとりとするような美しい微笑みに心が動く。

さらに「シェリルのモデルなんてすごいチャンスだ、やってみろよ。咲季ならできるさ」という、いつになく優しい言葉に背中を押されてつい「わかった。やってみる」と、答えてしまった。
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