紫の花、青の出会い



小学五年生。


新しい学年になり、新しいクラスになった。


そこで私たちのクラスはクラスに必要な係り決めをしていた。



「じゃあ同じ係りの人とグループ作って係りのプリントに名前書いて~」



先生が大きな声で指示を出す。


私を含めたクラスの子達は机を向かい合わせて


それぞれ自分が担当するクラスの係りでグループを作った。


私が担当する係りは『集め係り』。


提出物を集めて先生に渡す係。



私の他にもう一人男の子の係りがいるはず…。


どんな子なんだろう。


いじめたりする子じゃなければいいなぁ。



「あれ、ここ集め係り?」



そわそわしながらもう一人の係りを待っていると


ひとりの男の子がプリントを片手にやってきた。


「うん、そうだよ。」


「あ、そう。とりあえずプリントに名前~…っと」


彼は私の目の前の席に座るとプリントにサラサラと自分の名前を書き込んだ。


“杉山 諒”


すぎやま…まこと?かな。


「す、ぎやま。これからよろしく。」


私は彼の名前を知るなりそういってぺこりと頭を下げてみた。


「えっ、ああ…こちらこそ」


向こうは突然のことで驚いたみたいだったけど


それでもペコリと頭を下げてくれた。


いい人…なのかな。


それを見てホッとした私は彼が名前を記入したプリントに


自分の名前も書き込んだ。


集め係りと大きく文字がプリントされた下に私と彼の名前。


その下には余白があり、係りではどんな仕事をするのか


自分たちでルールを決めて書かなければいけないようだった。


「ねえ、すぎやま。ここ…」


杉山に余白に書く内容を相談しようとしたそのときだ。


「わ、なにこれすげえ!おもしろっ!どうなってんの??」


カチカチカチカチ…ッ



?…何の音???



プリントから顔をあげると私の折りたたみ式の定規が


杉山の手によって今にも360°に曲げられそうになって…


いや、折られそうになっていた。


おいこらそれは180°までしか広げられないぞ。


「ちょ…っ!おまえなにやってんの!壊れるから!壊れるからそれ!!」


「すげ~、おし。折りたためるとこから360°回転させてみよう」


「ふざけんな折れるわっ!返せバカ!」


「ええーっやだ!」



やだじゃないよ!小学一年生かおまえは!


ほらね、曲がらないでしょ!?諦めよう?


それじゃ横に真っ二つになるだけだし。ね?ね?


……う、まだ360°回転させようとしてるし!


ミシミシいってんじゃん。やめたげてよー定規が可哀想だよーっ


あああ!!いい人だとか一瞬でも思った私が馬鹿だった。


こいつうざい。


というかなんかイヤっ


何がイヤかわからんけどとにかく嫌いだーっ!!!


いつまでカチカチやってんだー!


はよ定規返せ!ていっ!


「あっ取られた…」


あからさまに残念そうな顔をされた。


いやいや取られたのは私の方だから!


「くそう。次こそは絶対にやってやる」


やめろ。


「はぁぁぁぁ…。私の定規が…」


杉山から取り返した定規は根元のネジが緩んだようで


畳んだ状態から両はしを掴んで広げなくても


つまんだだけでブランと広がるようになってしまっていた。


色も、透明な青だったのに無理に力を加えたせいか


プラスチックが歪んで白っぽくなっているところがある。


使い勝手いいから、大事にしてたのに~。


「……はぁ。」


初対面のはずなのに、なんでこんなことされてんだろ私。


これからこいつと同じ係りとか…………





……うん、サボろう。





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