聖魔の想い人
序章[月夜の出会い]
真っ暗で何も見えない。
そんな林の中を、何度も石につまづき、小枝に体中をひっかかれながらラファルは走っていた。
胸が締め付けられるようで息が出来ない。いつ立ち止まってしまうか分からない。それでも逃げなければならない。
体の底から、涙と一緒に込み上げてくるものを必死に奥歯をかみしめて我慢し、ラファルは走った。
背後からは、人々の叫び声やどなり声、犬の鳴き声、わずかにちらつく松明の灯りが迫ってくる。捕まったらおしまいだ。
殺されるー…
"「逃げなさいラファル。どこか遠くへ。誰の手も届かないような所へ」"
母はそう言って、ラファルを逃がしてくれた。母は無事だろうか。母も逃げてくれただろうか。
捕まってはいないだろうか。殺されては…
「ッ!!」
石につまづき、体が前に倒れる。転んだ瞬間、こめかみを石にぶつけ、おん…と頭に音が響き、意識が遠のく。
意識を手放さないようきつく歯をかみしめ、大きく息を吸った。空気を上手く飲み込めず、むせこみながらも後ろから迫ってくる音に急かされるように、再び立ち上がって走り出す。
口の中が切れたのか、血の味がした。自分の心臓の音がやけに大きく聞こえ、耳の中でどく、どく、と脈うっている。
恐い…恐い…
逃げなきゃ…
まるで、その思いにしがみつくように、ラファルは闇の中を走って行った。
そんな林の中を、何度も石につまづき、小枝に体中をひっかかれながらラファルは走っていた。
胸が締め付けられるようで息が出来ない。いつ立ち止まってしまうか分からない。それでも逃げなければならない。
体の底から、涙と一緒に込み上げてくるものを必死に奥歯をかみしめて我慢し、ラファルは走った。
背後からは、人々の叫び声やどなり声、犬の鳴き声、わずかにちらつく松明の灯りが迫ってくる。捕まったらおしまいだ。
殺されるー…
"「逃げなさいラファル。どこか遠くへ。誰の手も届かないような所へ」"
母はそう言って、ラファルを逃がしてくれた。母は無事だろうか。母も逃げてくれただろうか。
捕まってはいないだろうか。殺されては…
「ッ!!」
石につまづき、体が前に倒れる。転んだ瞬間、こめかみを石にぶつけ、おん…と頭に音が響き、意識が遠のく。
意識を手放さないようきつく歯をかみしめ、大きく息を吸った。空気を上手く飲み込めず、むせこみながらも後ろから迫ってくる音に急かされるように、再び立ち上がって走り出す。
口の中が切れたのか、血の味がした。自分の心臓の音がやけに大きく聞こえ、耳の中でどく、どく、と脈うっている。
恐い…恐い…
逃げなきゃ…
まるで、その思いにしがみつくように、ラファルは闇の中を走って行った。
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