聖魔の想い人
ふわ〜あ、と仲間が見たら怒鳴り殺されそうな、大きな欠伸をした時、一軒の店に目がいった。

そこは物とひきかえに物を売る、物々交換をしている店で、店頭に立派な衣がかけていった。

「へい、いらっしゃい」

ユゼルが近寄ると、店主が賑やかに声をかけた。ユゼルは、店頭にかけられている立派な衣をしげしげと眺める。カダ式の物だということは、すぐ分かった。

「これ、誰が持って来たんだい?」

「それはさっき、女性が持ってきた物ですよ」

「…その女性は、子供を連れていなかったか?」

「いえ、子供は連れてませんでしたよ。ただ、引き替えに持って行ったのは、子供が着る平民の衣でしたけどね」

「そうか、ありがとう」

ユゼルは言って、さっ、と踵を返した。どうやら、収穫ありのようだ。





三時間程寝かせて、タリアはラファルを起こした。本当はもう少し寝かせてやりたかったのだが、どうにもさっきのカダの衛兵たちが気になる。

何のために国境を越えて来たのかも、タリアが狙いなのかラファルが狙いなのかも分からないが、早めに出発した方が良さそうだという気がした。ラファルは、眠る前よる随分しゃんとして起き上がった。

周囲を充分すぎる程警戒しトサカの家を出て、できるだけ裏通りを通ってシンを出た。
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