聖魔の想い人
シンの周りは、農民たちが住む農村と水田が広がっている。水田は今は何も植えられておらず、鍬の入れられていない土のみが広がっていた。

村人たちが家の前で薪を割ったり、縫い物をしたりして働いていた。

「…何か、寂しいところだな」

ぽつん、とラファルが呟いた。

「季節が季節なだけにね。…それ以前に、今年は不作続きだったみたいだから」

言って、タリアは周囲に視線を走らせた。誰かに見られているような気がしたのだ。

しかし、村人たちはみんな、それぞれのことに熱中していて誰もこちらを見ていない。

それを確認しても、"見られている"という嫌な感覚は消えなかった。考えていることが分からず、それ故次にどうするつもりか分からないので余計に恐い。

今のところ襲ってくる気配はないけれど、何人くらいいるだろう。

………一、ニ、三。

多くて三人。

それを確認して、タリアはラファルを引き寄せた。ラファルが、どうしたんだろう、といった表情でタリアを見上げた。


何か目的かは知らないけど、気を付けないとね……


剣をいつでも抜ける位置になおし、ラファルが放れていかないよう注意して少し歩を速める。その様子に何かを感じとったらしく、ラファルも大人しくついて来た。
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