聖魔の想い人
こちらが警戒している、ということを示せば、向こうもそうたやすく襲ってはこれないだろう。

それに、人里を出ない内は多分安全だろう。そうでなかったら、今ここで襲って来てもいいはずだ。襲う気がないのなら別だが。

「……タリア」

「いいから歩き続けな」

やはり不安になったのか。声をかけてきたラファルに、タリアはそっ、と返した。まだ不安そうにしながらも、ラファルは言われた通り前を向く。

気配は確実に、一定の距離をとりながらついて来ている。

……やっかいだな。

相手は恐らく手練れだろう。多くて三人いるということしか情報がなく、どんな武器を使うのか、体格などが分からないため、非常に不利な状況だった。

しかもこちらは子供連れ。戦いになったら、ラファルを守りながら戦うことになる。こんな状況は久しぶりだった。腕が鈍ってないといいけど…

迫ってくる。恐らく今すぐでなくとも剣を交えるであろう相手に注意しながら、タリアは我が家へと向かった。





…気付かれたか。

少年を引き寄せ、剣をすぐ抜ける位置になおした女を見て、ユゼルは軽く舌打ちをした。

ユゼルの斜め右前にいるフェナと、少し離れた所にいるオウノもそれに気付いたのだろう。少し身を低くし、気配を消した。
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