聖魔の想い人
フェナは小柄な女性で、弓矢を使った後方支援を得意とする。オウノはユゼルたちの頭格で、ユゼルではとても操りきれない重い剣を使い、力技をしかける大柄な男だ。

そしてユゼルはルアンの剣を使い、前に出て戦うニ十五になったばかりの剣士だ。れっきとしたカダ人なのだが、剣術を習ったのがルアンなため、カダの剣よりルアンの剣の方が使いやすかった。

仲間は他に二人いるが、そう多勢でかかることもないだろうと、ユゼルたち三人で来た。しかし、今あの二人も連れて来ればよかったのではないかと後悔し始めている。

あの女性。恐らく、相当の手練れだろう。

警戒し続けることに慣れているというか、歩きながらでも全くスキがない。それに加えて、少年も上手く自分の体を使い、ユゼルたちの気配から隠している。

オウノとフェナも、同じことを考えているだろう。二人がかりでも、少し厄介な相手だった。頭も切れるはずだ。そう簡単にやられてくれるはずがない。

ではどうする。
ユゼルは考えた。

あの少年も今は元気だが、その内必ず疲れるはずだ。何しろ、ほとんど歩いたこともないような少年だ。少年が疲れ始めたら、あの女だって必ず彼を気遣う。

その時が好機だ。

オウノがそっ、と目配せしてきた。フェナも頷き、ユゼルも目でわかったと返す。長期戦に備え、ユゼルは、水筒から一口、水を飲んだ。

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