聖魔の想い人
日が完全に沈み、闇が訪れた。

四時間と半時くらい歩いただろうか。本当はもう少し先に行っている予定だったのだが、何しろ周囲を警戒しつつ、ラファルを気遣いながらなため、どうしても進みが遅くなる。

気配は、ずっとついて来ている。タリアは決して気を抜かなかった。何度か休憩をとったが、その間も決して。

「ここから五キリアくらいは、ひたすら林まで真っ直ぐだよ」

最後の人里を離れ、タリアはラファルに言った。ラファルは、だいぶ疲れている。出発した時の元気は何処へやら。

ずっと俯いて、今にも歩きながら眠るのではないかと思う程目は閉じかけで、足元もおぼつかない。


まずいな…


タリアは内心舌打ちしたい気分だった。まさかラファルがここまで疲れるとは思わなかった。これではスキができてしまう。

何とかラファルを自分で歩かせながら、周囲の警戒を怠らず、出来るだけ早く目的地へ着くことだけを考えて、タリアは闇に包まれ、満月までもう少しといった月にのみ照らされている細道を歩いた。

たえられるだろうか…後一時間と半時。タリアがたえられても、ラファルがたえられなかったらおしまいだ。背負うなんてことはできない。

どうする…ここから先、人里はない。
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