聖魔の想い人
舞うように、という言葉がしっくりくる動きだ。しかしそれは、近寄れば容赦なく切り殺される、剣舞であるが。

ユゼルたち二人がタリアの動きの速さに決定的な傷を与えられずにいるが、それはタリアも同じだった。

攻撃が一方に片寄ればもう一方に切り殺される。タリアの剣は、どちらかといえば突に優れた剣だ。もちろん斬もできるが。一発で片付けたいのなら、突で倒す方が確率が高い。

風のように動くタリアでも、スキを作れなかった。一人でも充分恐ろしい殺し屋たちが二人でやって来たのだ。少しでもスキを見せれば、タリアの負けだ。

その時、対峙している大男ーオウノの視線がタリアから外れ、タリアの少し後ろに移った。タリアは一瞬、その意味を思案し、すぐに答えを見出だした。

すぐ後ろにラファルがいることを思い出し、タリアがとびずさったのと、オウノがラファルに向かって巨大な剣を振り上げたのは、ほぼ同時だった。

ラファルは、未だに状況が上手く握拍しきれてないようで、さっきタリアに押し倒された姿勢のまま、地面に腹ばいになっている背中から刺されたら、一発で殺されてしまう。

ラファルを庇おうと、咄嗟に差し出した右腕に鋭い痛みが走った。ぱっ、と血が散る。それを見たラファルが、短く悲鳴を上げた。
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