聖魔の想い人
しかしタリアには、切られたからといって攻撃を止めるようなことはしない。すかさずオウノの剣を蹴り飛ばし、すぐ脇に迫っていたユゼルにも、回し蹴りを放った。

ーこいつらはラファルを狙っているー


ラファルをこの場から離さなくては。タリアは周囲の気配ーどこかにいるはずの、もう一人の位置にだいたいの見当をつけ、ラファルに叫んだ。

｢ラファル!!この道をまっすぐ走りな!!｣

ラファルも、目の前の男たちもその言葉に一瞬ぽかん、としたが、行動を起こしたのはラファルの方が早かった。タリアの言葉に従い起き上がると、一目散に走り出した。

それを視界の端で見届けたタリアは、ユゼルに突進していった。ユゼルは、タリアの捨て身としか言いようがない動きに一瞬反応が送れた。

ギリギリのところで頭をそらし急所は避けられたものの、すぐに攻撃の対象を変えたタリアに、右肩を切り裂かれた。さすがにこの痛みにユゼルが怯んだ時、さらに足をはらわれ体勢を崩される。

タリアは身を低くしてユゼルの脇をぬけ、オウノに飛びかかった。しかし、さすがユゼルたちの頭だけあって、オウノは動じなかった。最低限必要な動きでもってタリアの剣先をかわし、剣をうならせる。

オウノの巨大な幅広の剣がタリアの懐をなぎ、タリアは一瞬息がつまった。しかしすぐに呼吸を取り戻し、受け身をとって地面を回転し起き上がる。

ぽたた、と腹の傷から血がこぼれ、足に伝った。焼けるような痛みに、計らずとも呼吸が荒くなる。
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