聖魔の想い人
林の中の小さな家で
ふっ、と水がわくように意識が呼び戻された。体が熱をもっていてあつく、喉も腫れているようでひりひり痛む。
パチパチ、と薪がはぜる音につられるように、鉛のように重い瞼を開けた。何も見えないほどかすむ視界に、何とか焦点を定める。
ふと体の脇に、温もりがあるような気がして、顔をそちらに向けた途端、体に激痛が走った。一度顔をしかめてから、今度は注意して自分の脇にあるものを見る。
ー…ラファル…
まるで寄り添うようにして、すやすや眠っているラファルがほんやり見えた。
無事だったのか…
心からほっとして、優しくその髪をなでてやり、まだかすむ視界に周囲を見回すと、火のそばに座って忙しく手を動かしている人影が見えた。
咄嗟に、剣を探して手が動く。すると、タリアが動いたのに気付いたのか、人影が振り向いた。
「タリア?」
名前を呼んで立ち上がりそばに寄って来ると、タリアの隣に腰をおろす。その男を間近で見て、タリアは一瞬、ぽかん、とした。
「……イ、チ?」
「目が覚めたか」
そう言って微笑んだ男は、黒に近い茶髪を平民と同じく布で包んで、いい男になりかけの穏やかな顔をしたタリアより少し年下らしい男だった。
イチの大きな手が、タリアの額にふれた。
「毒抜きは一応したけど、まだ熱が残ってるな」
パチパチ、と薪がはぜる音につられるように、鉛のように重い瞼を開けた。何も見えないほどかすむ視界に、何とか焦点を定める。
ふと体の脇に、温もりがあるような気がして、顔をそちらに向けた途端、体に激痛が走った。一度顔をしかめてから、今度は注意して自分の脇にあるものを見る。
ー…ラファル…
まるで寄り添うようにして、すやすや眠っているラファルがほんやり見えた。
無事だったのか…
心からほっとして、優しくその髪をなでてやり、まだかすむ視界に周囲を見回すと、火のそばに座って忙しく手を動かしている人影が見えた。
咄嗟に、剣を探して手が動く。すると、タリアが動いたのに気付いたのか、人影が振り向いた。
「タリア?」
名前を呼んで立ち上がりそばに寄って来ると、タリアの隣に腰をおろす。その男を間近で見て、タリアは一瞬、ぽかん、とした。
「……イ、チ?」
「目が覚めたか」
そう言って微笑んだ男は、黒に近い茶髪を平民と同じく布で包んで、いい男になりかけの穏やかな顔をしたタリアより少し年下らしい男だった。
イチの大きな手が、タリアの額にふれた。
「毒抜きは一応したけど、まだ熱が残ってるな」