聖魔の想い人
「…どれくらい寝てた?」

椀を受け取ってタリアが訊くと、イチは

「お前が一度起きてから半日かな。ちなみに、この子がここに駆け込んで来てからは約十七時間だ」

そう言ってぽんぽん、とラファルの頭を軽くたたいた。それでタリアはふと、ラファルが自分をここまで運んで来てくれたことを思い出し、礼を言った。すると、ラファルは顔をしかめた。

「それしか思いつかなかった。おいて行くのは嫌だったし…」

「けど、よくこいつの家がここだって分かったね」

「最後の村を出た時、タリアが、林までまっすぐだって言っていたのを覚えていたんだ。それに、煙が見えてたから、家がどこにあるのかもすぐ分かったし」

タリアは、へぇ…と感心した。よく、一緒にいたはとが倒れるという、十歳の子供にとってこの上なく狼狽えるであろう出来事に遭遇し、冷静にタリアが言ったことを思い出せたものだ。

煙の位置で家を確認したことも、普通の子にはなかなか出来ないことだ。

「この子は賢いぞ。お前がそうなった経緯も、しっかり話してくれたしな。根性もある」

「ありがとね、ラファル」

二人から褒められたりお礼を言われたりして、ラファルは赤くなった。

「さて、俺たちも飯にするか。おいでラファル」
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