聖魔の想い人
へぇ…とラファルは少し目を丸くした。ラファルには、ここまで長い間仲良くできる相手はいなかった。

「じゃあ、もう二十年は一緒なんだね」

「一緒…って程でもないよ。私はしょっちゅう出歩いててここにはいないし」

「いつ死んでもおかしくない生活してるしな」

「タリアは、どんな仕事してるの?」

首を傾げてラファルが訊いた。タリアとイチは、言おうか言うまいか相談するように顔を見合わせたが、タリアが話し出した。

「私はね、雇われ剣士なんだよ」

「雇われ?」

「普通の剣士はきちんと特定の主人がいて、その人の命令で動くだろうけど、私の場合は、主人がいない。金をもらって、依頼を受けて仕事をするんだ」

「ふぅん…」

「依頼の内容が終わっても、追っ手だか何だかに追っかけられてるからな。今まで死ななかったのが奇跡だな」

「何でそんな危ない仕事してるんだ?」

「…まぁ、そりゃ、色々ね」

曖昧に言って、タリアは鍋をすする。ラファルは、ふぅん、とだけ言って、それ以上は検索しようとしなかった。再び山菜鍋に感心を戻す。

イチも、やれやれと首を振り、自作の料理を食べ始めた。タリアは三杯おかわりし、ラファルも二杯おかわりした。

「お前、相変わらず食い意地張ってるな」

呆れてイチが言った。
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