聖魔の想い人
イチとラファルが林へ出掛けて行きひとりになったタリアは、おかげでゆっくりと先日の戦いを思い出すことができた。

あの二人の男たちーーどちらも手練れだった。そのつもりでかかっていなかったら、この程度の怪我ではすまなかったはずだ。

ーけれど。ひとつ、気になることがある。

あの、ルアン式の剣を使う男、ラファルを庇おうとしていなかったか、大男がラファルを狙った時、咄嗟に彼を庇おうとしていたよう気がしないでもない。

何故。
大男の方は、確実にラファルを殺そうとしていたのに。ひとつの組織の中で、目的が同じわけではないのか。

ラファルを殺せと命じられた者たちの中に、少なからずラファルを助けようとしている者もいるということだ。


…何で、あの子はこんな目に。


そこまで考えた時、賑やかな話し声が近付いて来て、戸が開けられた。イチが持ちきれなかったらしい薬草の束を持ったラファルと、それに少し遅れ、薬草が溢れんばかりに入った籠を腰から提げたイチが入ってきた。

「ただいま」

「あぁ、お帰り。随分集めたねぇ」

「この時期にこれだけ採れるなんて驚きだよ」

イチは笑って、ラファルから受け取った薬草と籠の中の薬草を布の上に広げた。そうして後で仕分けし、乾燥させたりすりつぶして他の薬草と調合したりするのだ。
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