聖魔の想い人
「ただいまタリア」

「お帰り。林は楽しかったかい?」

「うん。色んな植物があった。イチに、食べられる薬草とか実とか教えてもらったんだ」

「そりゃ良かった。そういうことを覚えておくのは大事なんだよ?ひとりで山に取り残された時に、生き残れる確率が高くなるからね」

「ラファルは物覚えがいいからな」

ラファルは、十歳という好奇心旺盛な子供らしく教えたことをすぐ覚えてしまった。この林で迷っても、しばらくは持ちこたえられるだろうというくらいだ。

その上、何でこうなのだろう、と考えたりしていた。

「お前は将来、学者や司祭に向いてるかもな」

「そうだね。色々と自分で考えてるのが好きみたいだし」

「好き…なんじゃなくて、一度気になるとはっきりするまで気持ち悪いんだ」

「…それは私のことか?」

タリアが渋い顔で訊ねた。

「他に誰かいるとでも?」

「ふん。何とでもいいな」

タリアは言って、ぷいっ、と顔をそむけた。


その夜。
その夜も昨日と同じように、温かい夕食を三人で囲んでいた。タリアはよく眠り、よく食べたので随分回復し、昼間はもう自分で剣の刃を磨いでいた。

美味しい、イチが作ってくれたシュカ(サケ)を煮詰めた鍋を食べ、そろそろ食器を下げようかという頃、ラファルがタリアに向き直った。

「ねぇ、タリア」

「うん?」

「ひとつ、お願いがあるんだけど」

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