聖魔の想い人
「彼らは、産まれた時はみんな同じなんだ。神も精霊も魔物も、みんな清らかで汚れがなく、真っ白だ。こちらで産まれる赤ん坊がそうなようにね。ただ、育った環境やそのものの能力、姿で、神や魔物とかいった呼び名で分別されちまう。その結果、こちらの人間に崇められたり嫌われたりして、崇められたものは人に対して良くし、嫌われたものは人に悪さをするようになる」

「…その話を聞くのは、初めてです」

イチが言った。
「魔物も、神と同じなんですね」

「あったりめぇだ。美しいか悪いかだけだ。人間に自分があるように、向こうにだって自分というものがある」

これだから人間は、というようにローダは大袈裟に手を振りあおいだ。

「それで、ずいぶん話がそれたけど、聖魔というのは?」

「あぁ…。そう、その、魔物の中にもね、いい奴がいて人間に良くしてくれる奴がいるのさ」

「ま、魔物が、人に?」

ラファルが声を上げる。

「そうさ。どんなに嫌われても、良心を捨てない奴ってのは何処の世界にもいるもんさね。その代表的なのが、呪術師やこのことを知る者たちは、聖なる魔物と呼んでいる<聖魔>だよ」

「それは、何か人に恩恵を与えてくれるのですか?」

タリアが言う。

「それなんて言うもんじゃない。わしらにとっちゃ、そこらで崇められている神なんかより、ずっと神聖なんだ」

ふざけ半分、しかし真剣半分で言ったローダに、タリアは肩をすくめた。
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