聖魔の想い人
「ヨルサって、市が開かれてる町だよね」

「そうだ。調度今日始まっただろうから、行って、薬草を売れば少しは旅費の足しになるだろう」

「売りに行くのについて行っていい?」

「もちろん」

日が昇って辺りが明るくなり、温かくなるに連れて、一行の口数が増えてきた。

「この花はハミ・ノユク<乙女の花>って言って、女神が愛している花だそうだよ」

「わぁ〜、綺麗な花だね」

「神話の一説にもあったね。…あぁ、乙女の花よ。女神に愛でられし、白き衣をまといし花よ。我にもその美しさあらば。……ってね」

思いがけず美しいタリアの歌声に、ラファルは拍手を送っていた。

「タリアの声、綺麗だね」

「そりゃどうも」

「でも、そんな歌、俺知らないな」

「タリアは、長年色んな国を旅しているからね。ルアンだけじゃなく、世界中の色んな神話や歌、物語、伝承なんかを知ってるんだ」

イチが説明する。

「色んな国の言葉も話せるしね」

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