聖魔の想い人
そこで、ラファルははっ、とした。自分はカダにいた時と同じ言葉を使っている。なのに、ルアン人のはずのイチにはきちんと通じ、彼が言っている意味もちゃんと分かる。
「イチも、カダ語が分かるの?」
「ん?あぁ、違うよ。カダとルアンは、ほとんど言葉が同じなんだ。場所を示す単語が違ったりするけどね」
「そうなの?」
「あぁ。例えば、カダ語で雪峰山脈(せっぽうさんみゃく)は何ていう?」
雪峰山脈だけを共通語で言い、イチが訊いた。
「えっと…トゥルン・ハサ」
「ルアン語では、マナン・ティルって言うんだ」
「へぇ〜…違う国で言葉が同じなんて珍しいね」
たとえどんなに近くて仲の良い国でも、それぞれ独自に築き上げ、民が誇りに思っている文化がある。
言葉などというのは、その土地の者が一からつくり上げたもので、発音が似ていることはあってもこんな国に不自由なく会話できることはまずないのだ。
「ラファル。ルアンとカダが、ずっとずっと昔は同じ国だったって話、知っているかい?」
タリアが言った。初めて聞く話に、ラファルは声を上げた。
「イチも、カダ語が分かるの?」
「ん?あぁ、違うよ。カダとルアンは、ほとんど言葉が同じなんだ。場所を示す単語が違ったりするけどね」
「そうなの?」
「あぁ。例えば、カダ語で雪峰山脈(せっぽうさんみゃく)は何ていう?」
雪峰山脈だけを共通語で言い、イチが訊いた。
「えっと…トゥルン・ハサ」
「ルアン語では、マナン・ティルって言うんだ」
「へぇ〜…違う国で言葉が同じなんて珍しいね」
たとえどんなに近くて仲の良い国でも、それぞれ独自に築き上げ、民が誇りに思っている文化がある。
言葉などというのは、その土地の者が一からつくり上げたもので、発音が似ていることはあってもこんな国に不自由なく会話できることはまずないのだ。
「ラファル。ルアンとカダが、ずっとずっと昔は同じ国だったって話、知っているかい?」
タリアが言った。初めて聞く話に、ラファルは声を上げた。