聖魔の想い人
………帝の息子で、皇子様、ね。

世の中には、宮の奥で浮き世離れした生活を送っている皇子様だけではないのだ。こんな小さい頃から、こんなに重い物を背負っている皇子様だっている。

辛かったらすぐ人に押し付け、自分は人の手柄を横取り人をこき使って自分では何もしない。賢くないくせに悪知恵がきき、人を見下すだけ、というのがタリアが長年抱いて来た王族の印象だった。

もとよるタリアはは王族に対して、あまり良い印象を持っていない。けれど、今回初めてその偏見を改めた。

辛くても決して投げ出そうとせず、何かしてもらったらきちんと礼を言い、自分で何でもやろうとする。

賢く、色んなことを考え、人に自分を感じさせない。そんな王族もいる。……公には皇子ではないけれど。

ーこれだから人間ってのはダメなんだね。一で全を判断しちまう。

自分を反省して、そっ、と色んな知識や知恵、考えがつまっているラファルの小さな頭を撫でた。ラファルは、少し不審気にタリアを見上げたが、すぐに笑った。そうして、元気良く歩き出した。

「強い子だな」

隣でイチが、何故か哀れむように言った。タリアがそちらに顔を向けると、イチは辛笑して、

「気付いてるか?」

そう訊いた。
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