西山くんが不機嫌な理由
そんな彼らの小話集。
お正月と特別な一日。
「西山くーん!おはよう!」
「…………ん」
至極曖昧な返事を返す西山くんに頬がゆるり、いとも容易く緩む。
無視が基本な毎日だけれど、こうして視線を逸らしつつも言葉を返してくれる機会が分かり易く増えた。
素直に嬉しくてたまらない今日この頃。
「まだちょっと暗いねー。西山くん寒い?」
「…………」
「そうかそれは良かった。風邪でも引いたら大変だもんね!」
小さく首を横に振った西山くんの意図を汲み取り、ひとり話を進ませる。
見渡す辺りはまだおはようと言うには相応しくないであろう、圧倒的な暗闇に包まれた景色が広がっている。
時間を確認するものを家に置いて走ってきたので、今の時刻はおよそ4時過ぎだろう。
つい20分前に公園で待っているとメールを送ると、若干不満気な表情を浮かべつつもタイミング良く西山くんが姿を現した。
西山くん家のすぐ近所にある公園にぽつり、設けられているベンチにふたり腰を下ろす。