西山くんが不機嫌な理由
「…………なにそれ」
「え、え?それって?」
「…………どうして」
間近で食い入るように見つめられ、怖気るが見逃してはくれないだろうとせめて平静を努める。
「…一応私、彼女として一番最初におめでとうって伝えたかったし。プレゼントも渡したかったし。それに……」
「…………」
「それに、一番最初に西山くんの側で笑って欲しかった!」
張り上げた声に、私を見詰める西山くんの瞳がやんわりと優しいものになる。
些細な変化に気が付いて嬉しくなっていると、不意に前髪を上げられ露わになった額に冷たい感触が触れる。
それは、他の何でもなく西山くんの唇で。
驚きと気恥ずかしさでパクパク口を動かすことしか出来ない。
「に、にっ、西山くん…っ」
「…………女、無視した」
「え、は、話してないの?」
「…………必要ない」
「プレゼントは、受け取ってないの……?」
「…………いらない」
「じゃあ、それじゃあ、笑い掛けても、いないよね?」
次第に嬉々としていく気持ちを西山くんが感じ取ったのか、小さく頷いて。
慈しむような笑顔を浮かべて、距離を縮めてくる。
「…………凪にだけ」
そう、呟くほどの微かだけどはっきりとした声。
誕生日プレゼントのお返しには、最高の言葉と口付けを頂きました。
-00 お正月と特別な一日-
(明日も明後日も、ずっとずーっと一緒にいよう)
「ぶえーっくし!はっ、やばい、凪さん風邪引いたかも!」
「…………移す?」
「へっ、あ、わわ、待って待って!」
「…………待たない」
「あれーなんか怒っていらっしゃる?拗ねてらっしゃる?どうしよう、萌える!」
「…………移そう」
「ちょ、ひや、タンマタンマ顔を近付けないでー!!」
温もりが恋しい季節です。