西山くんが不機嫌な理由
西山くん怒ってます。
私より頭いっこ分大きい山城くんに隠されて、西山くんの姿が視界から外れる。
今、どんな表情をしているのかも分からない。
「…………凪、来て」
「……っ」
消え入るようなその声を、姿こそは見えずともしかと耳で受け取る。
迷うことなく山城くんの後ろから顔を覗かせて、西山くんの様子を窺う。
今のは聞き間違いではないことを確かめるために。
少し長めの前髪に邪魔されてよく見えないけれど、確かに西山くんの瞳は真っ直ぐにこちらに向けられていて。
私の前にいる山城くんには目もくれずに、その綺麗な双眸には私だけが映し出されている。
胸のときめきがキャパオーバーを越しつつ、西山くんの元へと足を進める。
山城くんのことを気に掛けている余裕はなかった。
目の前に西山くんがいる。
よそ見をすることなくその端麗な顔を見詰める。
「にしや、」
「呉羽ちゃん。昨日の告白の返事、聞かせてくれないかなー」
「……えっ」
振り返れば飄々とした顔の山城くんが、西山くんと私を交互に見て薄笑いを浮かべている。
ぞくり、底の見えない意図に背中が粟立つ。
「(さ、作戦は続行中なの!?)」
「(もちろん)」
私の心の声を見事に読み取ってくれたらしく、肯定の意味を込めて大きく頷いてみせた。
「ねえ西山くん、俺君呉羽ちゃんのこと好きなんだ。譲ってくれないかな」
鼓動が波打つ。気になって西山くんを見上げるが、残念ながらその無表情からは何も読み取ることが出来ない。
燃え上がる瞳の奥も、今では氷のように冷たく凍っている。
彼の本心が、見えない。