西山くんが不機嫌な理由
君に笑ってあげます。
強く強く、もっと強く。
唇が痺れるほどに甘く、苦く、強引に。
座り込んだ床に当たる地肌はやけに冷たく、でもその倍以上に身体の中は温度が上昇していく。
押しつけられている唇が深く口内に侵入する。
生暖かい何かが差し込まれることはないけれど(いえ期待なんてこれっぽっちもしてませんとも)。
私はむしろ触れ合っているだけのほうが好きだと思った。
肩を掴む手は、やはり微かに震えていて。
西山くんはきっと怒っている。
だけどそれ以上に、何かに悲しんでいるような気がしてならない。
キスは嬉しい。すごく嬉しい。素直に嬉しい。
不謹慎だとは分かっているけれど、私はばかだから。
――だけど、何かが違う。