西山くんが不機嫌な理由
案の定こちらの真意を読み取ることが出来ないようで、困惑の表情を浮かべる凪。
年中無表情の俺とは対照的で、凪は感情が真っ先に態度に出る。
ほんのりと頬が紅潮しているのを隠したいのか、凪はしきりに顔を俯かせようと下を向く。
それを阻止するべく、顎を掬って強制的にこちらを見上げるようにもってくる。
目と鼻の先には凪の驚きの色を孕んだ瞳。
瞳の縁は淡い赤が掛かっている。
「に、に、西山くん!私今顔絶対熱いよ!離したほうがいいよ!」
「…………」
「あれ!聞こえてない!?」
なんとか遠ざけようと話し掛けてくる凪の言葉を聞こえていない振りをして聞き流す。
「おおおお願いにしや、」
「…………凪は、それでいいの」
「え、もちろん!離して、」
「…………彼女に、なりたくないの?」
そう言えば、抵抗を試みていた凪の動きが止まる。
表情が一瞬で強張ったものへと変わり、恐る恐る目線をこちらに向ける。
「…西山くん、それって」
「…………」
「もし、もしも私が付き合ってほしいって言ったら。……西山くん、私の彼氏になってくれますか?」
緊張と、ほんの少しの恐怖と、そして期待を入り混じんだ双眸。
この問いに俺が頷けば、凪はどんな反応を見せるのだろうか。