【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
でも私達の幸せは長く続かなかった
舞龍も勉強も軌道に乗ってきた頃
朝起きると屋敷の中はかなり騒がしかった
使用人もいつもよりさらにちゃんとしていて
目まぐるしく働いていた
何も聞かされてない私には何がなんだかわからなくて
ただ戸惑っていた
その時、紅雅が目の前を通りかかった
「あ、紅雅!」
思わず呼び止めると
「ん?」
紅雅はいつもの優しい笑顔で立ち止まってくれた
なんだか空気がピリピリしてたから安心した…
「今日みんな忙しそうだけど何かあるの?」
私が尋ねる
…だけど、紅雅は顔を少し歪めた
チラッと時計を確認すると
「着いてきて」
そう言われ、言われるがままに着いていく
私の頭の中はモヤモヤで一杯だった
それに凄く嫌な予感がしたから
冷や汗が出てきて足が重くなる
紅雅は自分の部屋の前で止まると
「入って」
ドアを開けて部屋に入るように促した
「うん…」
私は言われるまま部屋に入った
「実は…紅愛に黙ってた事があるんだ…」
長い沈黙だったと思う
紅雅は重い口を開きそう言った
黙っていた、こと…?
「俺、結婚決まったんだ…」
「え?」
結、婚?
だって紅雅はまだ中1だよ?
結婚は18歳になってからって…
どういうことなの?
「もちろん今はできないけど…
許嫁、ってことかな
今日はその相手が来るんだ」
許嫁って政略結婚ってことだよね?
なんでそんなこと…
でも
「なんで言ってくれなかったの?」
一番はなんで黙ってたのか、ってこと
私だけ何も知らされてないなんて…
そんなのあんまりだ
「ごめん」
紅雅は目を伏せて呟くように言う
「どうしても言えなかったんだ…」