【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~


「相手、姫路 里桜さんって言うんだ」


私の部屋のソファーに向き合って座り


紅雅は重々しい口を開いた


「うん」


目を合わせられないまま私も返事をする


「向こうも中1で…


俺が18になったら結婚する事が決まった


それまで紅愛も会う機会がたくさんあると思う…


ほんとに、ごめんな」


紅雅は…何に謝っているのかな


紅雅がいいと思った人なら認めなきゃ


私が…邪魔しちゃいけないよね


「私なら大丈夫。


幸せになってね」


なんて、まだ先の話だけど


5年の月日が流れたなら私ももっと大人になってるはず


きっと受け入れられるはずだから


「紅愛…」


「でも、それまで一緒にいてね!」


「ははっ、あたりまえ」


紅雅はくしゃっと笑うと私の頭を


よしよしと撫でた






それから1ヶ月



「紅愛、そんな緊張しなくても」


「だ、だって…」


そう、今日は紅雅の婚約者、里桜さんに会うんだ


場所は近くのホテル


私達はそろそろ来るであろう里桜さんを待っていた








「紅雅君!」


その時、どこからかよく通る澄んだ声で紅雅を呼ぶ声が聞こた


ってことは…


「里桜!」


ふわりと揺れるウェーブのかかった黒い髪


パッチリした目に色白の肌


"美男美女のカップル"


その言葉はこの二人にぴったりだった


「ごめんなさい…待った?」


「いや、全然。


ほら、座って座って」


「ふふっ、ありがと」


わずか1ヶ月だというのに


本物のカップルのような会話が繰り広げられる


紅雅が会社の付き合いでこんな気を抜いた姿を見たことない



…私の知らない世界がそこにあった




「あ、こっちは妹の紅愛


紅愛挨拶して?」


「はじめまして


結……西条紅愛です」


「ふふっそんな改まらなくてもいいのよ?


私は紅雅君の"婚約者"


姫路 里桜ーhimezi rioーです」



え、今…


"婚約者"って強調した…?


まさか、ね…


「…でね?昨日パーティがあって…」


私の勘違いか


「それは大変だったね


あ、そういえば紅愛がさ…」


「え〜何それー!」


紅雅は里桜さんと2人だけの会話にならないように


話をふってくれて、全然退屈しなかった


「ふふっ2人は仲の良い"兄弟"なのね


私一人っ子だから羨ましいな」


でも、どうしても違和感が拭えない


顔は笑っているのに心は笑ってない


月並みな表現だけどそんな感じで…



「そうかな?


まあ俺はずっと紅愛は大事な人だよ、な?」


紅雅はそう言って私の頭を撫でた


「もー、子供扱いしないでよー」


「おーいー、照れんな〜」


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