【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~






ビリッ



…………っ!



「紅愛?どうした?」


「あ、ううん」


「大丈夫?紅愛ちゃん







具合が悪くなったらいつでも言ってね?」








…ああ、わかってしまった



この違和感は本物。



"婚約者" "兄弟"


それを強調したのは紛れもない真実で


"具合が悪くなったらいつでも言ってね?"


その言葉は…


"いつでもいなくなっていいよ"


というメッセージ


里桜さんは




私が邪魔なんだ



強い視線を感じながら私は俯いた


ブーブー


「あ、ちょっとごめん」


そんな時紅雅は携帯を持ち席を外した



「……………」


長い沈黙が流れる


痛いほどの視線は変わらなくて息苦しい





「…あのさぁ」


だけどその沈黙を破ったのは


里桜さんの刺のある声だった


「は、はい」


思わず肩が震える


ゆっくり顔をあげると


「……………っ!」


紅雅に向けていた愛おしそうな面影もみせない


冷たく蔑むような表情をしていた


「紅愛ちゃんさぁ


ちょっとは気を使ってよ


紅雅君は私のなの。


せっかくのデートまでついてくるとか


図々しいと思わないの?」


それは…


確かにそうだよ


だけど


「わ、わかってます…


でも


紅雅は私の…


私のたった一人の家族なんです」


どこにも居場所のない私の唯一の救いが紅雅だから。


「知らないわよそんなの。あたし関係ないし


それにそんなんで紅雅君を縛らないでよ!


アンタその考えが!


紅雅君の重りになってんだから!」



「重…り?」


「そうよ!アンタがいるからって


デートだって断られてんのよ!!」


そんなの初めて聞いた…


私、やっぱり邪魔してたんだ


いらなかったんだ。


思わず唇を噛み締め俯いた



「ごめん、お待たせ


って、紅愛!?どうした?」


そんな時電話を終えた紅雅が戻ってきた


状況を知らないから私の姿に驚いてる


「あ、紅雅君おかえり


紅愛ちゃんやっぱり具合悪いみたいだから帰すね?


迎えは私が呼ぶから!」


「里桜…わざわざありがとう


紅愛大丈夫か?」


「う、うん…」


有無を言わさない重圧のある声に思わず声が震えた


なんで…


ママもパパもいなくなって


唯一の家族だった紅雅も私のせいで自由にいられない









私って必要な人間なの…?







私は居心地の悪い里桜さんの車の中で


そんなことを考えていた
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