【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~

その日から紅雅はデートの度に私を誘うけど


私が行くことはなかった


どうしてそこまで里桜さんに私を会わせたいのかはわからないけど…。





「紅愛、ちょっといい?」


ほら、まただ。


私の部屋越しに聞こえたノックと紅雅の声


「なに?また里桜さん?」


たった一人の家族を奪われた里桜に嫌悪感を抱かないほど


私は大人じゃないんだ


「いや…今日はお客さんだよ」


…って、なんだ


違うの?


「そうなの?お客さんって誰?」


「まあ1回会ってみて。客室にいるから」


私に会いたいお客さん…いったい誰だろう


里桜さんじゃないならいいか。と、私は軽い気持ちで客間に向かった





コンコン…


「失礼します」


1階の客間。私はお客さんがいる部屋をノックして足を踏み入れた



「…え」


でも、そこにいたのは



「あんた…何で…」






里桜さんだった



驚きで言葉が出ない


「何でアンタここにいるのよ」


相変わらず私にむけられるのは冷たい瞳


それに何でここにいるってここ私の家なんだけどな…


「紅雅に私のお客さんがいると聞かされていたので」


なんて、言えるわけもなく普通に返した


「はぁ?別にアンタなんか呼んでないわよ」


そりゃあ…私だって会いたくなかったよ


「…紅雅探してきます」


この状況を聞くためにもいてもらわなきゃ


紅雅を探すため部屋を出ると丁度紅雅はこちらに歩いてきているところだった


「紅雅!お客さんって里桜さんだったの!?なんで!」


「紅愛、里桜と何かあったんだろ?


だからさ凝りを残して欲しくないんだよ」


そんな…


「紅愛ならできるよ


俺のために頑張ってくれない?」


紅雅の、ために?


…そうだね


「わかった。」


「紅愛…ありがとう」


紅雅は嬉しそうに微笑んだ






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