【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~
「なっ!」
お母様の顔に驚きと焦りと苛立ちと…
色々な感情が浮かんでいる
「…そう。それなら出て行きなさい」
どうして
「わかりました」
私は人の幸せを奪って生きるしかないの?
そんなの…疫病神じゃない
何もできないのが苦しくて
守ってばかりなのが悔しくて
ただ唇を噛んで耐えるしかなかった
だけど
「紅愛、絶対連絡するから。待ってて?
跡継ぎはならないと思うから大丈夫
安心してな」
紅雅は私にだけ聞こえる声でそう囁くと
「今まで…お世話になりました」
そう言い残し
西条家から姿を消したーーー
それからは毎日が地獄のようだった
紅雅は無いと言ったけど私は西条家の跡取りとなった
でも私は紅雅が居たからそっちの勉強なんて一切してなくて、遅れを取り戻すため紅雅以上の酷い扱いを受けた
1日1教科につき2時間家庭教師が付いて勉強
その他に作法や礼儀、伝統文化…気が遠くなりそうになる日々を送っていた
話す相手は白石だけ。無駄口を叩けば暴力
ほとんど監禁に近いような教育を受けた
逃げることも出来ない毎日は本当に気が狂いそうで
何度も何度も死にたい、そう思ったことかわからない
だけど
私は紅雅の連絡をまっていなきゃいけないから…
そう思って毎回とどまるけど
もう、限界だった
死ぬ事はできない。でももう溜めることも出来ない
そんな時だった
夜中に目が覚めて二度寝しようにもできず
なんなくふらりと部屋の外に出た
適当にぶらぶら歩いていると
「あれ…?」
ふと立ち寄ると紅雅の部屋だった部屋のドアが開いていた
いつもは閉まっているのに
何でだろう…?
私は何かにひかれるように足を踏み入れた
「わぁ…久しぶりだ」
あれからほとんど何も変わっていない紅雅の部屋
荷物が若干減っているけど本当にあのまま
「懐かしいな…」
机の上にはたくさんの写真が貼ってある
その殆どが私とのツーショット
小さい頃から最近までの。
本当に大切にしてくれてたってことが痛いほどわかる
だからこそ
「早く…連絡して…」
待っているのが、辛い
思わず頬に一筋の涙が伝った
ずっと我慢してきたから
少しくらいは…いいよね…?
ふと気が抜けるとどんどん溢れる涙
もう、止まらなかった
ヒュウウウ…
ブワッ!!!!!
「うわっ!」
しばらくすると開いていた窓から強い風が吹き込み部屋の中がかき混ぜられる
その風で涙も吹き飛ばされて。
でも、そのかわり…
「これは…っ」
ヒラリヒラリと落ちてきたのは
紅雅と仲間が写ってる写真だった
それはいつか外の世界を楽しそうに教えてくれた時に見たもの
家の中ではほとんど見られないキラキラとした少年のような表情で
屈託の無い笑顔で笑うその写真の中の紅雅が
羨ましかった
外の世界が見たい
その欲求は私を大きく変えることになる